いつも胸やけ

ムーミンと夫と子どもと暮らしています

砂のお城

本が発売日を迎えるまで、最低週に一度は日記を書こうと意気込んでいたのにもう怠けてしまっている。身体もだるいし眠いけど、そういうコンディションでどんな風に書けるのか、ハードルを下げるためにも勢いで書いて更新してやろう。

朝、子どもが着替えの際に引き出しから水着を引っ張り出して「こえ!(これ)」と言うのであちゃーと思う。奥に隠しておいたはずだったのに見つかってしまった。なぜ水着を着たがるのか。きみはTPOというものを知らないのか(知らない)。水着といっても袖のあるつなぎのようなタイプで、素材を除けばまあ着て行けなくもない、パイナップルの陽気な柄で登園したらいいか、と思いつつ結局最後は泣かずに、なんとか穏便にTシャツに着替えてくれた。もうすっかり肌寒く、長袖を着せた。いつのまにか90センチが袖も折らずに着られるようになっている。

今日は教職員の卒アル記念撮影がある、と昨日寝る前からそのことはしっかりあたまにはあって、だからきっとジャケットを着ていかなければならない。忘れずに羽織って出かけた。水筒のお茶、冷たいの? あったかいの? と夫に聞かれ、迷って冷たいお茶をお願いする。氷はさすがにやめなね、と言われて従った。従って正解だった。

テスト前で、すこし早めに授業を終えて自習の時間に充てた。みな、静かに自習をするのでえらいものだと思う。前の学校では自習、というと途端にざわざわしはじめて、それはたいていおしゃべりの時間になった。生徒もブレザーを着ていて、やっぱり今日は寒い。夏は終わってしまって、だから一番今夏が遠いんだなと思う。金木犀はまだ香らないが、そろそろだろうか。

昼休み、職員室に戻ると「もうここ閉めるのでみなさん外へ出てください」と言われる。ぞろぞろと、教員も職員もみな移動して、正面玄関に写真撮影の台が設置されている。なんとなく流れで一番うしろの高い台に乗って、けっこうぎゅうぎゅうにつめて並ぶ。「もうすこしこっちへ詰めてもらえますか、前の方の間から顔を出す感じで!」とてきぱき指示を出すカメラマンをわずかに顎で指すようにして、「あいつ、同級生なんだよ、幼稚園同じでさ。みんなで作った砂場のお城あいつに壊されて、やな奴だったんだよほんと」と前に立つ先生が小声で話すので、こんなぎゅうぎゅうの距離感でそんな面白い話、その先生とほぼ話したことはないが、これはさすがに笑っていいだろう、とちゃんと聞いて、ちゃんと笑った。みんなの砂の城を破壊したカメラマンの指示に従いながら、揃ってマスクを外して、口は閉じたほうがいいのか、笑ったほうがいいのか、うっすらわたしは笑みをたたえて、そうして写真撮影は滞りなく終わった。

今日はたまたま授業変更があって午前中に授業を終え、テストも刷って折り、急ぎの用もない。切れかけていた小テストの用紙を大量に印刷して、裁断機でどんどん切っていく。こういう単純作業がわたしは好きで、テストを折るのもまったく苦ではなく、なんなら他の人のも請け負ってもいいくらい。考えごととまでは及ばない、けれどこうして手を動かしながら何か思ったり、印刷室の教員の往来、チャイムの音、そういうものを半分気にして半分はぼんやりしながらどんどん作業する。この学期分は困らないであろう大量の用紙のストックができて、ちゃんと使い切れるだろうか、もし死んだら無駄になる紙を、一応生きて生徒に配る想定でこうしてじゃんじゃか刷っては切って、机の引き出しの奥へと仕舞い込んだ。

帰り道、本屋に寄って『群像』を読む。一番は大森静佳さんの随筆めあて。弟さんたちとシュノーケリングをしたときの話で、とても好きだった。今月号には他にも目次を見れば知り合いの名前がたくさん載っている。じっくり立ち読みして帰ってきてしまったが、明日また行って買おうと思う。自分の本の営業にも行かなければならない。レジを見て、どうだろう、話を聞いてくれるかどうか、自分の本は置いてもらえるだろうか。

夜は昨日に引き続きハヤシライス。今日は卵を乗せようと思って、そのタイミングでリビングにいた夫に「あ、オムハヤシにしたらよかったね」と言われ、するよ! と返すと歓喜の声。おいしく食べた。

今日も子どもはお気に入りのこまち(新幹線)と風呂に入り、こまちと眠りについた。布団に入るときにつめたい車両に腕が触れて、こまちか、とそのたびに思う。夫はテーブルを挟んで、今日わたしが買ってきておいたブラックモンブランを食べ、米を研ぎ、保育園から持ち帰った汚れものを洗ってくれた。今日は今シーズンに入ってはじめて、ストーブをつけた。