いつも胸やけ

ムーミンと夫と子どもと暮らしています

威張ることじゃない


日曜は近くのスーパーがポイント五倍なのでそれに合わせてだいたい買い物に行く。一歳の子どもを売り場に放つと手当たり次第触りたいものに触れようとして手を焼くので、夫に任せてひとりでせかせかとスマホのメモを見つつまわる。今シーズン初めて秋刀魚を手にした。途中、急激な腹痛に見舞われサービスカウンターに買い物かごを預けトイレに駆け込む一幕もあった。

スーパーはモールのなかにあって、専門店街の通りにあたらしくワイモバイルができていた。しかし、その両隣はUQモバイル楽天モバイル。需要があるからそこにあたらしくできるわけで、わたしだって何を隠そう楽天モバイルユーザーであり、しかしそれでも、もっとなんとかならないのかなと思いつつ、その手前の広場では小児救急医療にかんする相談会なるものが催されていた。山大病院の医師が相談に乗ってくれるという。「なんでも構いませんよ、ぜひ」とスタッフらしき女性に言われたが開始まであと三〇分はあるらしく、ポケットティッシュだけもらった。しかし夫は参加したそうだった。相談することがあればいいが何かあるだろうか。アレルギーのこととか? 参加すると「ちょうこくん」(市のマスコット)のぬいぐるみがもらえるらしいことだけ、すこし心残りだった。

帰宅後、アパート下に夫と子どもを待たせて大急ぎで焼きそばをジャッと作り、タッパーに詰め、階段をまた駆け下りる。今日は近くの公園内の遊園地が一〇〇〇円で乗り物乗り放題、天気もいいし思いつきで行ってみることに。
しかしこれが地方のリアルというのか、イベントなんてほかになく、すると一極集中してしまってとにかくものすごい人。いつもの寂れた場所と思えず、だってこんな、なんてことないダンボもどきの乗り物に行列している。早々に諦め、トーマスのささやかな乗り物に乗せてやった。秋晴れといえばそうだが昼間は日差しが強い。こんな暑い中つまらないアトラクションに並んで、ふだんはガラガラなのに、みんなバカなんじゃないかと思うがわたしだって同じ気持ちで勇んでやってきて、子どもは一歳だからまだ興味をそらせることはできるものの、もっと大きくなれば「やっぱり帰りましょう」なんて聞き入れるはずがなく、好きで並んでるわけじゃないよな、と思い直す。みんな、といつもひとまとめにして勝手に見下したり、そうして自分の愚かさにこうして書きはじめてやっと気づいたりする。

遊園地からはなれた広場で焼きそばを食べ、しかし子どもは丘の上にあるバスのアート作品が気になって仕方なく、ぐいぐい手を引っ張られる。広々した丘にはシートを広げてくつろぐ人びと、大きな犬を連れたひと、「ワンワンおっきいねー」と言いながら近づくも、子どものひと回りどころかさらに大きな犬、それも二匹、はなれた場所から遠慮がちに子は犬を眺めていた。

ほとんど抱っこをつねにせがまれるが、安全な場所と判断すればたちまちそこは子どもの遊び場になって、急に丘を駆け出す。先に追いかけていた夫の「あー!」という声、子どもの泣き声、坂で加速度がついて止まれずそのままもつれるように転んでしかも前転したのだという。泣くがそれも案外一瞬なのだった。噴水を見つけてせっせと靴を脱ぎ池に入ろうとするが底がぬめっておりなんとか回避して帰路の途。

昨日郵送した校閲ゲラが無事にKさんの元へ届いたと追跡で分かり、ほっとする。窓口で「台風の様子によってはなんとも」と言われ、締切ギリギリだったので気を揉んでいた。戻しの作業は連絡がなければ無事に進行しているということらしく、メールが届くと一瞬ドキッとする。

車でこてんと寝た子どもをリビングに寝かせ、その横に夫が寝そべって、会話はしないが起きているらしい。わたしはそのそばのソファで本を広げている。外から、タンタン、でもパンパン、でもない(的確なオノマトペを言ってみせるのが苦手)何かが何かを打ちつける音。遅れてトントントントットット、と金槌の音が聞こえて、屋根の修理だろうか。外の日差しは今もあかるく風もあり、ベランダの洗濯物がはためくたびに開いたページがチラチラと乱反射するように、よく晴れた日にだけ見る、本がこうしていっとき水面のようになる感じ。ハンガーが窓に当たって不規則にこつこつ、言う。

さっきから何やら熱っぽく、試しに測ってみると三七.四℃ある。やっぱり、と思うがそう考えればこのくらいの怠さというのは珍しいことではなく、ならば気づかないだけで熱、出しているのかもしれない。みんなも熱、知らない間に出しているんじゃないだろうか。保育園に行かせる平日は毎朝検温せねばならず、それで春からは自分たちも熱を測る癖というか、ん、ちょっとこれはと思ったらすぐに測るようになった。全然外れるときもあれば、やっぱりと思うこともあり、でも結局はそんなに勘はあてにはならない。

今は風呂でこの日記を書いており、さっきまで子どもが「あーっ!」「これぇー!これー!」と、なんの絵本を読んでもらっているのか大歓声が聞こえていたがそれも静まって、眠ってしまえば当たり前だがこんなに音のない部屋、というか家。

今朝、夫が「こんな元気なのは元気から生まれた元気ちゃんだから」と子どもに言い、いやわたしから生まれたんですが、と思って思うだけでなくそう言った。「もし立ち会い出産してればそんなこと言わないんじゃない」とも言った。いや、書きながらそんなことはまったくなく、けれどあの辛さやしんどさが無碍にされるような、その一瞬のやりとりで感じたネガティブな何かは飲み込みたくなかった。威張ることじゃないのに、けれどこういう反応をしてしまう。

今日は大阪文フリ、TLも盛り上がっており羨ましく、東京文フリはどんな感じなのかなと、まだ二カ月も先なのにそわそわする。自分の本を求めに来てくれる人はいるだろうか。すこしはいてくれるかもしれない、でもたくさんいてほしい、たくさん来てくれるだろうか、そう欲張った根性が何より厄介で、どういう心持ちで発売日までいればよいのか、あと一ヵ月こんな感じで心ここにあらずの状態かもしれない。それも含めて、カウントダウン的に生活の記録を残していこうと思う。

相撲は千秋楽、高安が負けて残念。なんとなく、この春から高安をひいきに応援している。