いつも胸やけ

ムーミンと夫と子どもと暮らしています

歌人見習いが車の免許を取るまで日記その16

仮免許を無事取得後、今は路上教習のまっ最中。どうにかこうにか。おっかなびっくりやっております。

50分のうちほぼつねにアワアワしているのだけれど5〜10分くらいは運転タノシイ!ドライブ爽快!という気持ちも徐々に芽生えつつ、余裕のあるときにはI先生との会話も弾みます。
あそこのお店、チキンカツが美味しいんですよ〜とか、あそこは生ういろうがうまい!とか近頃になって色々教えてくれるI先生。そうなんですね〜先生は甘いものお好きなんですか?と聞くと「大好きです」「へ〜そうなんですねえ」なんてほのぼのとしたやりとりを楽しむ。

やはり車窓。ドライブ。これはもはやドライブ。ドライブデートだ。デートに違いない。

なんてことをニヤニヤしながら思っているのですが、今日こそうちにやってきたベリーサの話をしようというつもりなのだったワタシは。
これからのベリーサの話をしよう。しようではないの。

今春、某県にやってきたわけだけれど実のところ、身構えていたほどの不便さはなくってここはホントに田舎?というくらいの立地のよさ。徒歩10分圏内に映画館のついたショッピングモールがあるのが大きいが、スーパーにも困らない。コンビニもある。ないのはスタバだけってもんでワタシは自転車と原付があれば十分やっていけるじゃあないのと満足していた、のだが夫はそうでもないらしく、目下原付での通勤なので確かに雨の日は大変。まあ言われてみれば車で遠出もしたいといえばしたい。

そんなこんなでわれわれ、車を買いにゆくことにした。ホントに一回見に行って買うとは思わなかったけれど。

時はGW、勇んで向かったのは大手中古車販売店のガ◯バー。電車に揺られて10分弱。

細かいことはよくわからんがあまり高くなくかつまたかわいい感じの車ならなんでもいいやとなかば面倒な諸々はすべて夫に託すというスタンスでどっかと腰を下ろし、早速購入可能な車たちを見せてもらう。◯リバーさんはあれなのです、いわゆるよくある感じのお店にバーンと現物が並んでいてその中からいいと思ったものを選んで試乗したり、ってんではなく、所有する全国の中古車たちをPC上で選択、というシステムなのだった。なのでそこで決めた車は決めちゃったらもう決めちゃったということで、あとは到着してのお楽しみ。

色は白や黒じゃつまんないよねえとかコンパクトカーがいいかねえやっぱり、なんていう諸々の条件から絞られたクルマたちを吟味する。マーチは安定のコンパクトさでよいけれど実際は少し狭いのか?うーんしかしヴィッツとかパッソはなんとなくしっくりこない。うーんうんうんと唸っているわれわれのもとにサジェストされたのが、マツダのベリーサなのだった。



マツダ・ベリーサ



はじめて耳にするはずのその名前に、なぜかそっと耳元をかすめるような懐かしさを感じる。



あなた、どこかで…?




✴︎




私の家は転勤族だった。父の仕事で数年に一度は引っ越し、小学校二年生の時にはじめてやってきたのが北海道札幌市だった。

五月、下校する友人はできたもののまだクラスにはなんだか馴染めない。頬杖をつきながらぼーっと朝の学活を眺めていると、今日から転校生が来るという。そんなこと先生言ってたっけ。新学期ならまだしもこんな微妙な時期に?教室の戸が開く。現れたのは、スラリと手脚の長い、栗色の髪をした少女だった。お名前は、と促され、彼女が口にしたのは、




マツダ・ベリーサ



✴︎




ああ。ベリーサ。久しぶりだね。今までどうしてた?私はあの後またすぐに転校しちゃったけど。席がたまたま隣で。うんうん。そうなの?あなたもすぐに東京へ?


他に見ぬエレガントでなめらかなオレンジ色の車体。それでいてコンパクトでつつましい車幅。何もかもが懐かしい。あの時。私たちは。何も知らなかったね。子どもだったね。


ワタシは気づけば涙を拭いていた。夫も頷いている。ワタシたちはもう、この車にするしかなかった。これは、そう運命だったのだ。

…そんなこんなで?色々比較して悩みながらも、われわれははじめての自家用車をベリーサに決めたのだった。今はもう生産されていないとかで、確かに街なかでお目にかかることはあまりない。だからこそ、一層愛おしくも思えるベリーサ。

本当に愛せるかしら?なんて少しの不安も抱えながら、ワタシたちはガリ◯ーを後にしたのだった。


罪深いおしゃべりばかり溢れだす、カローラ、義兄の白いカローラ(山崎聡子)

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